キャンプ場作りに明け暮れていたある朝、泊まり込んでいたプレハブで携帯のアラームが鳴った。

それは東京で仕事をしていた時に、少しでも自然を感じながら目覚めたいと思って設定していた鳥の鳴き声のアラームだった。

まだ電気工事も済んでいなかったので、夜プレハブに戻ってくると特にやることもなく早寝早起きの生活だったので、さっと起き上がりアラームを止めたが、外ではアラームと全く同じように鳥たちが鳴いていた。

「なるほどねー、ここではそんなアラームは必要ないんだな！」

起き上がって適当な服に着替えて、近い将来農園になる予定の場所に植えたトマトやらナス、虫除け効果を期待して何ヶ所かに植えたミントなどの様子を見に行く。

肥料も、もちろん農薬も使ってない、ただ植えただけの野菜には蕾がつき始めて、うまくいけば実がつきそう。

キャンプ場の準備もだけど畑も少しずつ作り始めないと時期が過ぎちゃうよなー、などと思いつつ、ひと通り見終わったらトイレを作る準備をする。

毎週のように仲間が手伝いに来てくれて、あーでもないこーでもないと言いながらなんとか形になった、明らかにプロが作ったトイレにはない、いびつなシルエット。

だが、扉を開ければそこには便器があり、誰がどこからどう見てもトイレである。

ひとりで無音で黙々と作業していると（特に雨の日とか）すぐ行き詰まるので、ホームセンターで買ったラジオをつけてみたり、キャンプ場がオープンしたらBGMで流したいと思っているレコードを掛けたりしてみる。

近くの工事現場の人たちにも少しは認められ始めたのか、ちょこちょこ挨拶したり話しかけたりしてくれるようになった。

天然のめだかを養殖してるおじさんは様子を見ながらよくアドバイスしに来てくれる。

この辺りの地区の区長さんは80を過ぎても毎日のように段々畑の斜面を登って高台にある竹林に竹の子を掘りに行く。

竹林の横にあるテントサイトになる予定の高台から見える里山の景色は絶景。

後を付いていくと一本掘って夜食べろとお裾分けしてくれた。

奥さんに呼ばれてすぐ向かいの家にお邪魔した時に、「この辺の竹の子は土が粘土質だから柔らかくてアクがないからアク抜きしないで食べられるんだ」と教えてくれた。

キャンプ場のど真ん中には山神神社という山の神様を祀っている神社がある。

最近はキャンプ場作りでバタバタしていて、なかなかお参りに行けていないけど、毎日竹の子を掘りに斜面を登っていく区長さんの姿は半分神様のように見えている。

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【村長の日記】vol.2